時代は変われど、昔と変わらぬ時間が今も流れています。

江戸、明治、大正、昭和、平成。石屋の歴史は、日本の激動の時代でもありました。
そんななか、竹久夢二、近衛文麿、北大路魯山人などの文人墨客をはじめ、多くのお客さまが県内外からお越しになり、静かな時間をたのしまれていかれました。

寛政元年創業。加賀藩お墨付きの湯宿。

元湯石屋が創業したのは、江戸時代寛政元年(1789)のこと。
金沢城二里以内に温泉宿をつくることがかたく禁じられていた藩政期に、加賀藩家老・前田土佐守が深谷の湯につかり病気を快癒したことから、藩士や町民など多くの人が利用できるようにと、加賀藩が温泉場を整備したことにはじまります。

恋多き竹久夢二が、大切な奥さんと過ごした時間。

大正時代を代表する画家・竹久夢二が、金沢出身の妻・たまきと里帰りの際に宿泊されました。
まじめな人物だった当時の主人・石屋二左衛門はのちに竹久夢二について、「正妻さんと泊まられたことは元湯石屋の誇りであるが、わしが女であっても惚れることはないだろうなぁ」と語っていたそうです。

琥珀の湯を、霊泉と賞賛した近衛文麿。

皇族につぐ格式ある家柄・五摂家の筆頭であり、のちに内閣総理大臣をつとめた近衛文麿が金沢へ来遊された際、宿泊されたのが元湯石屋です。
元湯石屋の湯を霊験あらたかな温泉であるとおよろこびになった近衛文麿は「霊泉」と揮毫され、住まいのある京都まで元湯石屋の源泉を四斗樽に詰め何度も運ばせたと記録が残っております。

【元湯石屋 二百有余年のあゆみ】

年表
大正十年頃の写真 大正五年頃の写真